飛蚊症とは?!
目の前に黒いものが飛ぶことを眼科では飛蚊症といいます。明るい所や白い壁、青空などを見つめたとき、 目の前に虫や糸くずなどの“浮遊物”が飛んでいるように見えます。
文字通り蚊が飛んでいるように見えるという意味ですが、患者様によって その表現は色々で水玉、ハエ、黒いスス、糸くず、お玉じゃくし、輪っかなどがあります。
また、色も黒いものから透明なものまでさまざまで、数も1個から数個、時に多数のこともあります。 これらの“浮遊物”は目を動かすと、ふわっといった感じで視線を動かしてもなお一緒に移動してくるように感じられ、 暗い所では気にならなくなります。
どうしておきるの?!
眼球の中の大部分は、硝子体と呼ばれるゼリー状の透明な物質(生卵の白身のようなドロッとした液体)が詰まっています。 角膜と水晶体を通して外から入ってきた光は、この硝子体を通過して網膜でピントが合います。 ところが、硝子体に何らかの原因で「濁り」が生じると、明るいところを見たときにその「濁り」の影が網膜に映り、 眼球の動きとともに揺れ動き、あたかも虫や糸くずなどの“浮遊物”が飛んでいるように見え、飛蚊症として自覚されます。
目の水平断面図
視神経の上にある白い浮遊物(硝子体混濁)の影が、網膜に映り、ゆらゆらと動いているのがお解りになると思います。
飛蚊症の原因って?!
1.生まれつきのもの(出生前の組織の遺残)
母体内で胎児の眼球が作られる過程では、硝子体に血管が通っていますが、眼球が完成するとこの血管は本来無くなるのが通常です。しかし、生まれた後も血管や組織の名残りが、“浮遊物(濁り)”として硝子体に残存することで飛蚊症の症状を感じることがあります。 この飛蚊症は、生まれつきのものなので、問題はありません。
2.硝子体の年齢による変化(後部硝子体剥離)
硝子体は、加齢変化によりゼリー状から液状に変化し、次第に収縮して網膜から剥がれます(後部硝子体剥離)。後部硝子体のゲル骨格部分であるコラーゲンが凝集して飛蚊症の症状をもたらします。髪が白髪になるのと同じようなことで生理的な現象です。
また、強度近視の場合には、通常50~60歳で生じる後部硝子体剥離が10歳ほど早く起こりやすく、しばしば飛蚊症の訴えがあります。 このタイプの飛蚊症も“浮遊物(濁り)”が視野の真ん中に来ると多少うっとうしいと感じますが、治療の必要はありません。
3.硝子体の年齢による変化以外の原因によるもの
網膜裂孔・網膜剥離
後部硝子体剥離やその他の原因で網膜に穴が開いたり(網膜裂孔)、その穴を中心に網膜が下の層から剥がれて硝子体の方へ浮き出します(網膜剥離)。 このような現象が起こると初期症状として目の前を飛ぶ“浮遊物(濁り)”の数が急に増加し、放っておくと失明に至ることもあります。
硝子体出血
糖尿病・高血圧・外傷などにより網膜の血管が破れ、出血が硝子体中に及ぶことを硝子体出血といいます。硝子体出血は、少量であれば飛蚊症を感じたり、多量であれば、目の前に赤いカーテンを引いたように感じたり、著しく視力が低下することもあります。
ぶどう膜炎
「ぶどう膜炎」とは目の中に炎症をひき起こす病気です。そのことから、「内眼炎」とも言われ、その原因には失明に至る重症なものもあり、さまざまです。
散瞳検査
飛蚊症の原因が生理的なものか、病的なものかを診るために瞳を広げる目薬を使用し、詳しく眼底検査をおこないます。 この目薬を使用すると、5~6時間は見え方がぼやけたり、距離感が取りにくくなりますので、自動車・バイク・自転車などの運転は大変危険です。 このような症状のある方は、ご自分で自動車などを運転しての来院はお控えください。
飛蚊症で気を付けて頂きたいこと
飛蚊症のほとんどは病気でないものですが、ときに思いがけない病気が原因となっていることがあります。 “浮遊物”の数が急に増えたり形が変わったり、視力が落ちるようであれぱ、網膜剥離・硝子体出血・ぶどう膜炎などの 失明に至る重篤な目の病気が隠れていることもあるので、直ちに眼科医に相談してください。
光視症とは?!
光視症とは、視野の一部分に閃光(せんこう)を感じる症状で、「キラキラしたものが見える」「ピカピカと光が見える」「稲妻のような光が見える」など患者さんは様々な訴えとして表現をされます。
光視症は、次の2つに大きく分類されます。
(1)眼球内の硝子体(しょうしたい)および網膜が原因の光視症。
(2)片頭痛による閃輝性暗点、頭蓋内病変が原因の光視症。
硝子体および網膜が原因の光視症
この光視症は、患者さんご自身で左右どちらの目に起こったかを認識することが出来るという特徴があります。
通常、網膜の前にはゼリー状の硝子体(卵の白身のような透明なもの)が詰まっていますが、この硝子体は加齢などで収縮してきます。硝子体と網膜は若い間しっかりと癒着しており、それが剥がれる際、網膜が引っ張られその刺激で光視症が起こります。また、収縮した硝子体が眼球運動によって網膜にあたる時にも起こります。これは数週間から数年間持続します。
光視症は、網膜剥離の兆候の場合もあり、網膜裂孔(網膜の裂け目)や網膜円孔(網膜の穴)が発見されることもあります。その場合は、レーザー光凝固術や硝子体手術などの治療が必要です。この他の原因として網膜循環障害、ブドウ膜炎、糖尿病網膜症などもあります。
まず散瞳検査といって、点眼薬を使って瞳を大きく拡げ眼底の端まで診る検査を行います。
網膜に異常が認められない場合にも、網膜剥離の危険性を有することもあり、定期的な受診は必要です。もし、症状に変化があれば、早く受診してください。
目の水平断面図
片頭痛による閃輝性暗点、頭蓋内病変が原因の光視症
この光視症は、患者さんご自身で左右どちらの目に起こったかを認識することが、出来ません。
閃輝性暗点
片頭痛の10~20%で経験される前兆に相当する症状です。目の前に歯車様のジグザクの光が見え、引き続いて物がゆがんで見えたり、目の前が真っ暗になったりします。大抵は両目同時に起こり、10~30分ほどで症状は消失します。
閃輝性暗点が消えると典型的な場合には、頭の片側にズキズキした痛みが生じます。
これは、物を見る中枢(視中枢)がある後頭葉(脳の後ろの部分)に血液を送っている血管が、けいれんを起こし、血流が減少するために起こります。けいれんが治まって血管が開くと、血液が大量に流れ込みこれによって頭痛が生じます。15~20歳代の女性に多く、1週間に1回とか数カ月に1回とか定期的に起こる場合が多いです。トリプタン製剤によって症状が軽快することが特徴。
頭蓋内病変
閃輝性暗点のみで片頭痛を伴わない非典型的タイプもあり、中高年に多く注意が必要です。血栓による一過性の脳循環障害が原因である可能性もあり、動脈硬化、高血圧、糖尿病、高脂血症、不整脈など血栓を起こす危険因子がある場合には、かかりつけ医での定期的な経過観察は重要です。
この他に脳梗塞、脳出血などの可能性もあります。病変の場所によっては、視野欠損を生じることもあるので視野検査を行います。 念のため頭部のコンピューター断層撮影法(CT)や核磁気共鳴映像法(MRI)による精密検査を受けて頂く場合もありますので、その際には神経内科や脳外科の専門医へご紹介をさせて頂きます。