病原体の種類によって発症のスピードや程度が異なりますが、まぶたの裏側が充血したり、黄色または緑色の目やにが出たり、ゴロゴロしたような異物感などを生じます。たいていの場合は抗生物質の点眼をすることで1~2週間程度で治ります。処方された目薬を1日3~4回の点眼を続け、充血や目やになどの症状がなくなってきたら目薬を中止します。
症状が出ている間は、目をこすらないこと、手指の洗浄・消毒をしっかり行い、家族とタオルを別にすることなどを心がけ、感染拡大を予防しましょう。
はじめに
例年、6月に入ると学校ではプールが始まります。夏場は、ウイルス性結膜炎の流行シーズン。 ウイルス性結膜炎は、ウイルスの感染によって結膜の炎症が起きる病気です。
3種類のウイルスが主な原因です。
- (1)流行性角結膜炎(はやり目):アデノウイルス8型・4型・37型・19型感染
- (2)咽頭結膜熱(プール熱):アデノウイルス4型・3型感染
- (3)急性出血性結膜炎:エンテロウイルス70型感染
いずれも感染力が強く、目をこすった手やタオルを介して他の人にうつります。空気感染ではうつりません。 家族や学校で感染が広がると、集団感染を引き起こすこともあります。
こんな症状は要注意!!
- 目やにが出る
- 目が痛い
- 目が充血する
- 異物感がある
アデノチェック(アデノウイルス抗原精密測定)
診断法として基本的なものはウイルスの分離培養ですが、結果を得るまでに日数を要するため、 臨床現場ではより迅速で簡便な診断法が必要とされてきました。アデノチェックは、迅速で簡便なアデノウイルス抗原検出試薬です。 当院では、症状などに応じてアデノチェックを用い診断を行っております。
判定結果の判定法
判定表示部位のSとC部分にあらわれた赤~赤紫色の線で判定します。
《 陽性の場合 》
アデノウイルスによる結膜炎と診断されましたので、他の方への感染拡大を防止するため発症から約1週間の自宅療養として下さい。 医師が指定する診察日に受診して頂き、結膜炎症状が改善しているのか、またアデノチェックが陰性になっているかどうかなどの検査を致します。
《 陰性の場合 》
本検査は、特異性が100%と高いですが、感度が70%程度しかありませんので、陰性だからと言ってアデノウイルス結膜炎を全く否定することは出来ません。
予防が最も大切!!
はやり目などのウイルス性結膜炎は、流行性つまり他に人にもうつります。 そのためには、かかった人は他の人にうつさないように次のことに注意して下さい。
- (1)点眼するとき以外は出来るだけ目に触らないようにする。もし触ったら、その都度水を流して石鹸で手をよく洗うこと。
- (2)目に触れた綿やテッィシュペーパーなどはビニール袋などに入れ、他の人が触らないようにして捨てる。
- (3)充血・目やに・流涙などの症状が強い間、お風呂は控え目にし、首から下だけで一番最後に入るようにする。
- (4)患者さんの洗面用具・タオルなどは、家族のものと別にする。
- (5)医師に指示により、通勤・通学は急性期には休む。また、医師の許可があるまでプールには入らない。
ウイルス性結膜炎の治療
この病気に有効な点眼薬は、いまのところありません。感染したウィルスに対する免疫が出来るまでに時間を要し治るまでに2週間かかることもあります。 ウイルス感染により細菌感染もしやすくなるために抗菌点眼薬、炎症を抑えるためにステロイド点眼薬などを使用します。 点眼をしたからといって、すぐに良くなる訳ではありません。また、毎日通院する必要はございませんので、医師の指示した日および時間に受診して下さい。
そもそもアレルギーって何?
私たちの体は、細菌やウイルスなどの異物(抗原)が侵入すると、抗体という抵抗力を作り出し、抗原抗体反応によって病原体をやっつける力をもっています。これがいわゆる「免疫反応」で、自分の体を守るために必要な反応です。ところが、体内に侵入した異物に対し体が過敏に反応しすぎると、かえって私たちに不都合な結果をもたらすことがあります。この過敏反応が「アレルギー」と考えられています。
アレルギー性結膜炎とその種類
目の表面に何らかのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が付着して、結膜に炎症を起こす病気です。
季節性アレルギー性結膜炎
花粉などが原因で毎年同じ季節になると症状が現れます。また、花粉症の4大症状として鼻水・鼻づまり・くしゃみ・目のかゆみがあります。
通年性アレルギー性結膜炎
ダニやハウスダストなどが原因で、季節に左右されず症状が一年中現れます。
春季カタル
小学生くらいの子どもに多い重症なアレルギー性結膜炎です。まぶたの裏側の結膜に大きなブツブツ(石垣状乳頭)のため角膜びらんや角膜潰瘍などができ、目やに・異物感・流涙を自覚し、酷くなると強い痛み、視力が低下する場合もあります。
アレルギー性結膜炎の症状
*目のかゆみが特徴!!
*充血 *目やに *涙が出る *まぶたの裏のブツブツ
アレルギーのメカニズムと症状
アレルゲンが目の表面に付着すると、リンパ球から抗体がつくられ、肥満細胞と結合します。そこへさらにアレルゲンが入ってくると、肥満細胞に結合した抗体と反応し、この情報が肥満細胞の中に伝わります。すると肥満細胞の中のヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、目の知覚神経や毛細血管などを刺激し、強いかゆみや充血を引き起こします。まぶたの裏にはブツブツ(乳頭)が増え、白目はゼリーみたいなブヨブヨ(結膜浮腫)となることもあります。
原因物質
アレルゲンで多いのは、空中を漂って目の中に飛び込んでくるタイプです。
季節性アレルギー性結膜炎
代表的なものとして、スギ花粉(時期:1~5月)、ヒノキ花粉(時期:3~5月)、
カモガヤ花粉(時期:5~7月)、ブタクサ花粉(時期:8~10月)など。
通年性アレルギー性結膜炎
ハウスダスト(チリ、ホコリ、ダニ、カビなど)、動物の毛、コンタクトレンズの汚れなど。
診断
血液検査や皮膚テストで、アレルゲンを調べることも大切です。
アレルギーの原因物質が何かが解れば、アレルゲンを避ける対策が立てられます。
当院では、血液検査を行っておりますので、お申し出ください。
治療
治療の基本は薬物療法となり、その目的は日常生活に支障がないように
かゆみの症状を軽くすることが中心となります。
抗アレルギー点眼液
1.化学伝達物質遊離抑制薬
肥満細胞にある化学伝達物質が細胞外に出るのを抑制します。
2.抗ヒスタミン薬
かゆみを引き起こすヒスタミンが、神経や血管にあるヒスタミン受容体に結合するのを阻害します。
ステロイド薬
症状がひどいときには、炎症を抑える作用があるステロイドの点眼薬が処方されます。
しかし、副作用で眼圧が上がったり、感染症にかかりやすくなります。
長期にわたり点眼薬を継続する場合は定期的に通院し、眼圧のチェックが必要です。
免疫抑制剤
春季カタルの治療薬として最近使われるようになり、症状の悪化を防ぎます。
人工涙液
結膜や角膜に付着したアレルゲンを洗い流すので効果的です。
防腐剤の入っていない使い捨てタイプをお薦め致します。
防腐剤がかえって目の表面に傷を付けてしまうことがあるからです。
初期療法が大切
花粉症対策としては、花粉が飛び始める2週間ほど前から抗アレルギー薬の服用と点眼を始める「初期療法」が大切です。初期療法を行うことにより、症状を軽減させることができます。花粉症の症状に悩まされた経験のある方は、花粉飛散情報に注意して、早めに眼科を受診しましょう。
花粉症予防対策
前シーズン比や例年比での増減に関わらず、予報に基づいた早めの花粉症予防対策等が必要と考えられます。なお、花粉のばく露を避けるための基本的な対策には、以下のものが挙げられます。
ハウスダストの予防は掃除から
①こまめな掃除:
室内の掃除は、出来れば排気循環式の掃除機を用い、ホコリが溜まりやすい場所は、
濡れ雑巾やモップなどで拭きます。
②ほこりがつきそうな物を置かない:
カーテン・絨毯・ソファー・ぬいぐるみなどを身のまわりに置かないよう心掛けます。
③ダニ対策:
ベッドのマット・ふとん・枕にダニを通さないカバーをかけ、たたみや絨毯はダニが繁殖しやすいため
床はフローリングにする。布団は天日干しをする。
結膜下出血とは?!
眼球の結膜(白目部分)の下にある小さい血管が破れ出血したもので、白目がべったりと真っ赤に染まります。 一般に自覚症状はありませんが、患者さんによっては出血した時に目の痛みを感じることがあったり、出血量が多いため 結膜の血腫(出血のこぶ)が大きく盛り上がるとゴロゴロすることがあります。また、通常は視力の低下の心配はありません。
症状の経過
出血は、その量にもよりますが、1~2週間ほどで自然に吸収されることが多いです。
時間はかかりますが、出血は吸収されますので心配はいりません。
結膜下出血の原因って?!
1.眼局所の要因として
(1)眼の外傷・手術
先が尖った鋭利なもので目を突く、ボールが当たる、転倒などでの外傷を受けた時は、すぐに治療が必要です。 なかなか消えない結膜下出血は、穿孔性眼外傷が隠れている場合もありますから、必ず精密検査をうけて下さい。
(2)急性結膜炎
急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎(はやり目)などにおこります。この場合は、痛み・目やに・涙が増えるなどの 自覚症状がありますので、眼科医の診察を受け、他の人にうつさないよう十分注意して下さい。
2.全身性疾患
(1)動脈硬化・高血圧・糖尿病・出血性素因(貧血・白血病・紫斑病など)・腎炎など
繰り返し結膜下出血がおこる人は上記の疾患の疑いがあります。内科で異常がないかどうか調べてもらって下さい。 ほとんどの場合、結膜下出血がおこった後に眼底出血がおこることはありませんが、上記のような疾患が原因の場合は眼底出血がおこり、 視力に影響することもありますので注意して下さい。また、血液をサラサラにするお薬を服用されている人にも繰り返すことがあります。
(2)急性熱性疾患
マラリア、猩紅熱、ジフテリア、コレラ、発疹チフス、インフルエンザ、麻疹などでも結膜下出血がみられます。 原因疾患の治療を最優先して下さい。
3.原因不明のもの
誘因がはっきりしないことも多いですが、くしゃみ・せき、過飲酒、月経、水中メガネのしめすぎなどが挙げられています。
結膜下出血の治療について
眼局所の要因や全身性疾患の場合は、原因疾患の治療が必要です。まず、眼科医に診察してもらい指導をうけましょう。 当院では、点眼や熱気庵法(オフラ)で経過観察をさせて頂いています。 蒸しタオルで温めると吸収が促進できますので、ご家庭でもお試しになって下さい。
オフラは、温熱刺激を与えることにより、局所の毛細血管を拡張させて血行を促進し、 組織の新陳代謝を亢進させて炎症性産物や疲労性物質などを取り除き、細胞の活性を回復させる効果があります。 当院では、下記の病気に対して温罨法を行っております。
結膜下出血
血液の循環を良くして、出血の吸収を早めます。
霰粒腫(瞼のしこり)
組織への血行増加は、炎症性産物の吸収が行われるため炎症が早く引きます。
角膜炎・ドライアイ
マイボーム腺(睫毛が生えている部分の分泌腺)の機能の低下が原因で生じることもあり、 脂肪の分泌を促進することによって「目がゴロゴロする」「目が乾く」などの症状が緩和されます。
眼精疲労
筋肉の緊張をほぐす作用もあります。
翼状片とは?!
白目の表面を覆っている半透明の膜である結膜が、異常に増殖し、目頭の方から黒目に三角形状に入り込んでくる病気です。
翼状片の症状
異物感・充血:
翼状片がドーム状に盛り上がり目の表面が凸凹しているので、ゴロゴロした異物感を感じます。
また、結膜の部分はしばしば充血して赤く見えます。
ドライアイ:
正常な涙三角が破壊され、ドライアイと同じように翼状片の先端部分にドライアイによる角結膜所見を呈し、充血や異物感の原因となります。
視力低下:
翼状片の先端部分が瞳の近くまで伸びてくると角膜が牽引され、乱視が発生し、視力が低下します。
また、瞳孔を完全に覆った場合、視力が著しく損なわれます。通常、非常にゆっくりと進行し、瞳の縁に至るまで10年近くかかるようです。
翼状片の原因って?!
不明ですが、これまで主に中高年がかかるとみられていた翼状片も大量に紫外線を浴びると若い世代でも発症することが分かってきました。 紫外線の強い沖縄などでは、40代以上のおよそ30%がかかっていると推測されています。
詳しいメカニズムはまだ分かっていませんが、
→角膜の細胞の一部に細胞を破壊する活性酸素が発生する
→角膜に炎症が起きる
→修復が追い付かず炎症が慢性化する
→炎症を起こした細胞の性質が変化する
→黒目に白目の部分が覆いかぶさる
と考えられています。
翼状片の治療
点眼
翼状片自体は悪性の組織ではありません。特に症状がなければ放置しても問題はないのですが、充血や異物感が強い場合には点眼などの治療を行います。
手術
翼状片の先端部分が、瞳の近くまで伸びてくると乱視が発生して見えにくくなるため、この場合には手術が必要となります。 単純に侵入した結膜組織を切除するだけでは再発しやすいので、切除後に結膜弁の移植やマイトマイシンCの塗布、羊膜移植などを試みて再発予防に努めます。再発の傾向は、年齢が若いほど高く、高齢者では低いとされています。