ドライアイって?!
ドライアイは、涙の量や質が変わることで眼球表面に障害が起きる目の病気です。
「最近、何か目が疲れるなァ~」って感じることはないですか?!テレビ、ワープロ、パソコン、コンピューターゲーム機器、携帯電話などに囲まれて目が酷使される現代では、ドライアイの患者さんが年々増加しており、現在、国内には約800万人以上もの患者さんがおられると推定されています。
ドライアイを疑って診察をしていると、意外とその数が多いのに驚かされます。
ドライアイで悩んでおられる患者さんの生活の質の向上のため当院では、積極的にドライアイ診療をおこなっております。
ドライアイの原因って?!
涙の流れ
ドライアイの原因には、
1. 涙の出ないタイプ(涙液減少)
2. 涙の蒸発しやすいタイプ(涙液蒸発亢進)
の2種類があります。
涙の出ない原因
涙が蒸発しやすい原因
- 1.パソコン・テレビ・携帯画面などのモニターを見続けることにより、 まばたきが減少して涙が乾きやすくなります。
通常1分間のまばたき回数は、安静時に21回のところが、読書10回、ワープロ6回、 コンピューターゲーム5回との報告もあります。 - 2.気密性の高いお部屋では、冷暖房などの空調により乾燥気味です。
- 3.長時間・長期使用によるコンタクトレンズの装用で涙の安定性が損なわれます。
- 4.マイボーム腺機能不全:脂質は、マイボーム腺から分泌され涙液最表層に広がり、涙液の蒸発をコントロールしています。 マイボーム腺が閉塞すると脂質が不足したり、その性状も変化したりすることから涙液は蒸発しやすく、不安定になります。
当院のドライアイ診療の流れ
当院のドライアイ診療では、A.問診聴取、B.ドライアイ検査(①フルオレセイン試験紙による生体染色《ブルーフリーフィルター観察》、 ②涙液メニスカス(涙三角)の観察、③涙液層破壊時間(BUT)、④シルマーテストI法または綿糸法)などの結果を踏まえ、 「ドライアイかどうか」、また「どのタイプのドライアイか」などをご説明し、症状に応じたドライアイの治療を行っていきます。
まずは問診から
患者様が「疲れ目」を訴える場合は、ドライアイが存在する可能性が高く、ドライアイの検査をお薦め致します。
他に①何となく目に不快感がある、②目が乾いた感じがする、③目が痛い、④目がゴロゴロする、⑤目が赤いなどの症状がある場合も同様に検査の対象となります。
@12項目チェック
あなたの目の状態を12項目でチェックすることで、あなたのドライアイ度を診断致します。
@10秒チェック
10秒間、目を開けていられるかをチェック出来ます。
ドライアイの定義と診断基準って?
(2006年ドライアイ研究会より)
ドライアイ検査に使用する用具って?
(4)フルオレセイン用フィルター (ブルーフリーフィルター/タカギセイコー)
ドライアイの診断は、大病院に設置してあるような精密機器がなくても 自覚症状とフルオレセイン試験紙による生体染色、涙液メニスカス、涙液層破壊時間(BUT)の検査だけで診断が可能です。
ドライアイ検査って?
1.涙液検査
シルマー試験紙第Ⅰ法
この試験は、反射分泌と基礎分泌の和、すなわち全分泌を測定します。
自由にまばたきができる状態で5分後に測定。
正常値:10mm以上
異常値: 5mm以下
フェノールレッド綿糸法
pH指示薬であるフェノールレッドの酸性色の黄色で着色したもので、 涙液で濡れることにより塩基性色の赤色に変色する性質を利用して作られた検査糸で、 結膜嚢内貯留涙液量を反映しています。自由にまばたきができる状態で15秒後に測定。
正常値:20mm以上
異常値:10mm以下
涙三角(Tear Meniscus)
涙三角は、眼瞼と角結膜が接する部位に溜まる涙液により形成されます。 涙三角は、眼表面の涙液の70%程度が溜まるため、涙液量が減少すると一般的に高さは低下します。
正常値:約0.2mm
涙液層破壊時間(BUT)検査法
涙液は、瞬目によって角膜上皮・結膜上皮に広がります。 しかし、時間が経つにつれ、涙液層は破壊されます。涙液層破綻が始まりやすい。
角膜下方1/3に注目
正常値:10秒以上
異常値: 5秒以下
2.角結膜上皮障害の検査
色々な染色方法がありますが、当院ではフルオレセイン染色を行い、 数年前から導入しているブルーフリーフィルターを使用することにより コントラストの高い映像を得ることが出来ます。
フルオレセイン染色だけでは解り難かった結膜上皮の観察も容易になりました。
3.眼瞼縁のチェック
脂質は、マイボーム腺から分泌され涙液最表層に広がり、涙液の蒸発をコントロールしています。 マイボーム腺が閉塞すると脂質が不足したり、その性状も変化したりすることから涙液は蒸発しやすく、不安定になります。
4.その他
点眼液の副作用?
点眼液に含まれている塩化ベンザルコニウム(BAK)という防腐剤で角膜上皮障害を起こすこともあります。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は、ドライアイと口腔乾燥症(ドライマウス)を主症状とし、全身乾燥症状を示す中高年女性に多い原因不明の疾患です。涙腺の破壊や高度な機能不全に基づく著しい涙液減少が起こり重症の角結膜上皮障害を来たしやすくなります。
Stevens-Johnson症候群
Stevens-Johnson症候群は、薬剤過敏症やウイルス感染に続発する皮膚・粘膜・眼の急性炎症性疾患重症例であり、 多くの場合、眼症状が現れます。急性期の強い炎症が慢性化し、視力低下を伴う重篤な角膜上皮障害を来たします。
ハードコンタクトレンズ装用者
「3時―9時ステイニング」とよばれる角膜表面の点状の障害。 ハードコンタクトレンズのエッヂの下に涙が奪われる→その周囲の涙の層が薄くなる →油層の伸展が妨げられる→蒸発の亢進→角膜・結膜上皮障害を引き起こします。
ソフトコンタクトレンズ装用者
「スマイルマークパターン」とよばれる角膜のやや下方に限局した点状の障害。 ソフトコンタクトレンズ上の涙液の伸展が角膜上に比べて薄い→油層の伸展が妨げられる →蒸発の亢進→角膜上皮障害を引き起こします。
結膜弛緩症
たるんだ結膜が下眼瞼にかかっていると涙三角が形成されず、 まばたきをしても角膜・結膜上皮に涙液が広がらず、上皮障害が出やすくなります。
ドライアイの症状をやわらげるには?
- 目が疲れたら休ませましょう。
- テレビやコンピューターの画面は目より下に設置しましょう。
画面の位置を低くすると目の開きが小さくなるので、涙の蒸発が少なくなります。 - 部屋が乾燥していませんか?
加湿器を設置して空気の乾燥を防ぎましょう。
他にも濡れタオルを干したり、冬場ならストーブでお湯を沸かしたりしても効果的。 - 直接、冷暖房などの風に当たらないようにしましょう。
- たばこの煙に当たらないようにしましょう。
- ドライアイ用の眼鏡をかけてはいかがですか?
- 意識してまばたきしましょう。
ドライアイの治療って?
主なドライアイ治療点眼剤
点眼治療が基本となります。
(1)人口涙液(涙液の補充):
最初、1日4~6回点眼し、症状に合わせ涙液量が極端に減少している場合は回数を増やしても良いです。 防腐剤を含まない人口涙液を点眼することが望ましいです。通常の点眼液には、容器の中でカビや雑菌が繁殖しないようにするために防腐剤が入っています。 防腐剤は、眼球表面の傷の原因となることもあります。
特にドライアイの患者様の場合、元々目の表面に傷が付いていたり、 頻回に点眼が必要となるため、少なからず防腐剤の影響を受けてしまいます。
一方、防腐剤が添加されていない点眼液は、汚染され易く、 開封後1週間~10日で使い切ることが条件となります。
(2)ヒアルロン酸ナトリウム(涙液層の安定化):
1日4~6回点眼し、涙液減少を伴う場合は、人口涙液との併用が好ましいです。
(3)ステロイド点眼:
眼表面の炎症が強い場合は、点眼濃度に応じて1日2~4回点眼を致します。
●眼軟膏
顔面神経麻痺による瞼が上手く閉じられない場合は、涙液の蒸発を防ぐために点入。
点眼で治療効果が得られなければ
涙の排出口である涙点(上涙点/下涙点)をプラグ(栓)でふさいで少ない涙を溜める方法です。
現在は、下記の2種類の方法があり、いずれも保険適応です。
(1)シリコン製涙点プラグ:
シャンパンの栓のような形をした固形のシリコン製の極小のプラグ(直径0.5~1ミリ程度)を、涙点に装着します。
(2)アテロコラーゲンプラグ:
キープティアは、生体適合性の高いアテロコラーゲンを使用しており、体温によりゲル化する特性を利用して、 充填時には液状のため簡単に充填でき、涙小管内ではやわらかいゲルとなり刺激が少なく、かつしっかりと涙点を閉鎖します。
各涙点プラグの利点と欠点
●目を温める
1.蒸しタオルで温める方法:お風呂で湯船に浸かっている間に絞ったタオルを目の上に乗せるなど。
2.ホットアイマスク花王製:つけた瞬間から、約40℃の心地よい蒸気が大切な目と目元をやさしく包み込み、その心地よさが約10分間続きます。価格は、500円前後(5枚入り)、1200円前後(14枚入り)。
●眼瞼縁の清拭
1.マッサージ:
2.抗菌眼軟膏での清拭:
治療方針として
角膜ヘルペスとは?
角膜が単純ヘルペスウイルスに感染し、またそれに対する免疫反応によって起 こる病気です。
原因
単純ヘルペスウイルスは、知らない間に感染していることが多く、70~80代の
ほとんどの人では、体のどこかの神経節に潜んでいます。眼球の場合、角膜の
知覚を司る三叉神経節に潜んでいるこのウイルスが、ストレス・外傷・風邪・
疲労などがきっかけとなり、角膜の表面に出てくることによって発症。
角膜ヘルペスは、2種類に分けられます。
1.上皮型
ウイルスが角膜表面の上皮で増え、特徴的な枝分かれした樹枝状の角膜病変(樹枝状角膜炎)を呈します。
2.実質型
角膜の実質でウイルスに対する免疫反応が生じて、円板状の局所性の角膜浮腫および混濁(円板状角膜炎)を認めます。
症状
①上皮型:「ゴロゴロする」「まぶしい」「涙が出る」「目が痛い」「目が赤い」などを訴えますが、視力の低下は軽度です。
②実質型:充血と共にかすみを訴え、視力がかなり低下します。通常は片眼性で、再発を起こすのが特徴です。
治療
単純ヘルペスウイルスに対する特効薬としてアシクロビル(ゾビラックス)眼軟膏を投与します。実質型の場合、免疫反応を抑えないと混濁が改善しないので、副腎皮質ステロイドの点眼薬を併用します。上皮型の場合、副腎皮質ステロイドは、一般的に禁忌です。
最後に
角膜ヘルペスは、一度良くなっても三叉神経節にウイルスが残っており、これがしばらくしてまた角膜に出て来て、再発を起こすのが大きな特徴です。上皮型の再発を繰り返すと、実質型に移行し、角膜の混濁による視力低下などが生じ重症化する場合があります。経過が思わしくない場合には、早めに眼科を受診することが大切です。
使い捨てソフトコンタクトレンズが発売されてから、コンタクトレンズを使用する人が急増しました。その数は1500万~1800万人ともいわれ、国民の10人に1人がコンタクトレンズを使用していることになります。コンタクトレンズの普及にともなって、コンタクトレンズによる眼障害も増えてきています。このようなトラブルを回避するためにも、コンタクトレンズは眼科医で処方を受けること、正しいケアを行うこと、そして以下のような症状が出たら、早めに眼科医を受診することを心がけましょう。
巨大乳頭結膜炎
ソフトコンタクトレンズを装用している方に多くみられるトラブルです。コンタクトレンズに付着した、タンパク質などの汚れが原因になって起こるトラブルで、アレルギー反応と考えられます。アレルギー体質の方は注意すべき症例です。
症状
眼がかゆくなり、コンタクトレンズがズレやすくなります。
まぶたの裏側に異物感を感じるようになります。
目やにが増えます。
進行するとまぶたの裏側に、大きなコブのようなブツブツ(乳頭)ができます。
症状が出たら
コンタクトレンズ装用の時間を短くしましょう。
つけおき洗浄をこすり洗いにし、煮沸消毒をコールド消毒に変更します。
1日タイプの使い捨てレンズも有効です。
角膜潰瘍
コンタクトレンズ障害の中でも、もっとも重篤なトラブルの一つで、角膜表面に深い傷ができてしまうものです。長時間にわたるコンタクトレンズ装用、コンタクトレンズを装用したまま寝てしまう、レンズが目のカーブに合っていない、コンタクトレンズの汚れなどが原因です。感染を合併すると非常に危険で、ときには失明につながることもあります。
症状
眼が充血し、痛みを感じるようになります。
症状が出たら
コンタクトレンズ装用を中止し、すぐに眼科を受診しましょう。
角膜浸潤
決められた時間を超えてコンタクトレンズを装用したり、装用したまま寝てしまうなどが原因で角膜の呼吸を阻み、角膜が炎症を起こすトラブルです。
目が充血したり、痛みを伴うこともあります。
点状表層角膜症
角膜の表面をおおう上皮に点状の傷がついた状態になるもので、もっとも多いトラブルです。異物感を感じることもありますが、自覚症状がない場合がほとんどです。また原因も様々で、ハードコンタクトレンズ特有のもの、ソフトコンタクトレンズ特有のものがあります。コンタクトレンズの装用を一晩中止するだけでも症状は軽減しますが、原因がわからなければまた再発することになります。繰り返し発症していると、角膜上皮びらん、角膜浸潤、角膜潰瘍などの障害につながることもあります。
自覚症状がないため、わかりにくいトラブルですが、定期的に眼科医の検査を受け、適切な指導を受けるようにしましょう。